ご自身で歯周病を自覚され、治療を希望して来院される患者様の大半は、歯周病の何らかの症状が既に現れており、かなり病状が進行しているケースが多く、治療に要する期間も長くなります。
治療が早く終わるのに越した事はありません。が、そのような状態では、じっくりと腰を据えて治療を受ける心構えを持つ事が最も重要です。
また歯周病は、本人に自覚がないままに進行するという病気であるために、私たち歯科医院では、歯周病が進行していると思われる患者様には充分に歯周病に関するご説明を行い、治療の必要性をお話しするようにしております。
・歯周病治療 6つのステップ
歯周病の治療には、患者様それぞれにあった計画的な治療が必要となりますが、一般的に歯周病治療は以下のようなステップで行われます。
1)プラークコントロール
⇒検査の結果を元に、まず歯の表面のプラーク(歯垢)の除石を行います。歯ブラシでは除去できないため、歯科衛生士の協力が必要です。
2)バイオフィルムの除去
⇒口腔内に存在する微生物が凝集し、歯面に付着した状態がバイオフィルムです。(浴槽に付着する湯垢のようなもの)
3)プラークコントロールの確認
⇒歯垢などを除去した後に充分な歯磨き指導を行い、2週間実践していただきます。その後、歯垢や歯肉について2度目の検査を行い、変化を確認致します。
4)リスクファクターの改善
⇒その患者様にとって、何が原因で歯周病が進行してしまうのか、その要因を調べ、対策を施します。たとえば歯肉が引き締まっていない箇所は、その患者様の磨き方の癖のため、その箇所をうまくブラッシングできていないことを教えてくれます。
5)再検査
⇒4で行った対策や指導が有効に働いているかを確認するために、再度検査を行います。
6)より良いお口の環境を得るための治療
⇒それまでの問題が解決したら、最後はより良い口内環境を実現し、歯と歯周組織を長持ちさせるための治療に入ります。
なおこのような治療方法を、オーラルリハビリテーション(全顎治療)と言います。
次は、内服薬と位相差顕微鏡を組み合わせた新しい治療方法についてご説明致します。
歯科界の新しい分野「歯周内科学」。
これまでとはまったく異なった新しい考え方、つまりお薬で歯周病を治してしまう治療の総称です。
歯科における2大疾患と言えば、「虫歯」と「歯周病」です。
これは現在の歯科治療においては、感染症であるという結論になっています。
では、なぜ感染症なのに治らないのでしょうか?
医科において一般的な感染症といえば風邪です。一般的な風邪であれば、医師の指示に従ってきちんと薬を飲めば、ほとんどの場合治ってしまいます。
では、歯周病も同じように治らないのでしょうか?
歯周病の治療といえば、昔から歯磨き指導と歯石の除去が、どの歯科医院でもされている基本的な治療です。しかし、この基本的治療をしても、一生懸命歯磨きをしても、なかなか歯肉の炎症が取れず、歯肉の腫れや出血・口臭で悩まれ、歯周病で歯を失う方がおられることもまた事実です。
そのような中で、多くの歯科医師が知恵を出し合った結果生まれたのが、最新式の治療法 「薬で治す歯周内科治療」 です。
この治療方法には4つの大きなポイントがあります。
1)位相差顕微鏡での菌の確認
2)細菌の除去薬剤の内服
3)カビの除去薬剤、あるいはカビ取り歯磨き剤による歯磨き
4)除菌後の歯石取り
特に1は、非常に大きなポイントです。位相差顕微鏡でお口の中の菌を確認しなくてはなりません。歯周病菌がいるのか、カビが多いのか、あるいはきれいなのか。
位相差顕微鏡で確認をしなければ、適切な薬の選択ができないのです。
このように治療方法が発展したのも、歯周病が歯の問題だけにとどまらない恐ろしい病気であること、さらにそれがほとんどの方に関係があるためです。
最後に、歯周病菌によって引き起こされる全身疾患やそのリスクについて理解を深めていただきたいと思います。